冷たい風は気にならないほど。

ほんのり揺れる前髪が、可愛らしいチビ助の肌を撫でる。


「…あたしには、太一さんもいるし!」


 そういって、嬉しそうに笑った。

くるんとクセ毛を揺らし、冷たい空気を一気に温めるような笑顔。




 ……――ほら、オレの信じたとおり。


「ばーか」

 くいっと揺れる片方の髪の束を引っ張ると、予想通り身体を傾けたチビ助。


 いつもみたく、オレはそのまま先を歩き出した。


「も、もう!太一さんの意地悪っ」


 慌てたその声に振り向くと、チビ助は手馴れたように、引っ張った髪の束を二つに分け引っ張り挙げて手直ししていた。



その頬は、やっぱりぷっくりと膨れていたんだ。




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