フォーチュンクッキー

 このチビ助の慌てぶりを見てれば、おおよそ見当はつく。

昨日の駆け込み寺は杏ちゃんの家だったのだろう。


そして世話好きの親友は、不甲斐ないオレに対して渇をいれに来た……というとこか。


「めずらしいね、杏ちゃんが店に来るなんて」

 マスターから手渡されたカップに、マニュアルどおりココアの粉をいれ、お湯が沸くのを待つ。

他愛ない世間話のつもりだったんだけど、彼女は目を伏せておどけてみせる。


「そりゃわたしも受験生ですからね。いろいろ忙しいんですよぅ」

「でも杏ちゃんならうちの高校は圏内でしょう?」

 チラリと目をやると、その隣ではチビ助は居心地悪そうに肩をすぼめている。

そんな必要は、全くないのに。


「そんなことないですよ〜。……それに、わたしは私立の女子高を受験するし」


「え?チビ助と一緒じゃないの?」

 一瞬、耳を疑った。

文化祭だって一緒に来ていたし、なにより、仲のよい幼馴染三人がバラバラになるなんてオレすらも想像していなかったから。

「寂しいですけど、これはあたしが決めたことなんです。
……―それに、未来が受かれば雛太も一緒だし……ね?」

「へえ、そりゃ知らなかった」


 最後の言葉は、あてつけだったのだろう。

けど、今のオレには軽くかわせた。


お互いヤキモチだらけの新年初日に、オレはほんの少し、自信をもらえたから。


 それすらも不満なのか、さらに杏ちゃんは言葉を続ける。


「太一さんも留学で大変そうだから、未来もいえなかったんでしょうし仕方ないですよ」