フォーチュンクッキー

 口をぱくぱくさせた母さんの時間が、一瞬止まる。

オレはソファにおいてあったクッションを抱えて顔を埋めた。


「……アイツが、壊れそうなんだ…」


 今のチビ助には、オレがいてやらないと。

自惚れでもいい。


笑ってくれるなら、なんだってする。


 母さんのことだ。

きっと狂うほどの憤怒で罵声を浴びせられるに違いない。



そう思っていたのに、怒りというより呆れた声が降ってきた。


「あのねぇ……。周りがどうかなったからって、それは太一が合わせることなの?」


 頭ではわかっている。

けど、オレたちは割り切れるほど、まだオトナじゃない。


「……それは!……そう、かもしれないけど…」

 
「自分で言ったんでしょう?…あの娘と胸張って並びたいから、って!」


「………………」


 たしなめる母さんに、反論する言葉もなかった。

結局フラフラしているのは、他でもないオレ自身。


「ったく、すこし頭冷やしなさい!」

 ピシャリと言い切って、そのままリビングを後にした。