フォーチュンクッキー

「困ったことがあったら、いつでも電話しろ」

 そういって、ずっと渡せずにいた携帯電話のメモを小さな手のひらに握らせた。

すこし湿ったチビ助の手は、やけに冷たかった。


店から無理やり追い出すようにして、笑って背中を叩く。


 不安げに何度も見上げてきたけれど、チビ助が気が済むまで笑ってやった。

じっと見つめてきた後、納得したのか小さくコクンと頷き、ようやく家路についてくれた。



 一気に駆け抜けたような数時間。

どっと疲れが肩にのしかかるようだった。


 家に帰れば、新年早々、パタパタと世話しなく歩き回る母さんの姿。


「おかえり、太一。悪いけど急に仕事がはいったのよー」

 扉の音だけで判断したのか、青い小さなピアスを通していた母が鏡越しで話しかけてくる。

オレは黙ってソファにもたれて、その様子を見ていた。



「……母さん」

「なぁにー?」

 しきりに腕時計を確認している。

相当時間がないんだろう。


「オレ、さ……。留学、やめよっかな」


「ふうん…………………って、ええっ!?」


 ものすごい形相で振り返ってきていた。

それにまた、オレは驚いたのだけど。


「あ、アンタ!何言ってるかわかってるの!?」


 母さんの言いたいことも、重々承知だ。