「で、なんで中学校の勉強なんだ?」

 ごもっともな怜の質問。


 そして何よりもこの楽しそうな表情を見て、もうとめる術をオレは持っていなかった。


「…バイト」


 ただそれだけ答えると、二人はぽかんとしていた。


 更に質問をしようとする怜をさえぎるように、ちょうど担任がやってきた。


広げていた教科書をさっとしまって、オレは珍しく思いにふけった。


 目の前の怜や、隣のサトではなく。

もちろん、これから始まる試験のことでもない。




 まもなく試験開始という時間。




「チビ助、大丈夫かなぁ…」



 ちょっと慌てながらペンを走らせるチビ助が目に浮かぶ。


 焦るなよ?


 オレの祈りが通じるのかわからないけど、オレは無性にチビ助の笑顔が見たくなっていた。