「…太一さん……」


 ピクリと自分の口端がつりあがるのが分かった。

ああ、笑っているんだ、とまるで他人事の感覚。


「家も…なんとか探してみる。まだ、なんとか……」


 なにもできないあたしたちの中で必死に道を探してくれていたんだ。

それが、歯がゆくて悔しくて……すごく嬉しい。


 ずっと独り言のように話しかけてくれる背後の太一さんの腕に、あたしはそっと触れて頬を預けた。


「……未来…?」


 その温かさに救われる。


 勝手に一人で勘違いしてた。

あたしの周りには誰もいない、だなんて。


いつも不器用にでも見てくれている人が、こんなに近くにいたんだ。



「…太一さん……」


 そっと瞼を閉じて浮かぶのは、どれも小さな『嘘』たち。


 こんなコドモなあたしにくれた太一さんの言葉は、砂の城のように脆い。

けれど、荒みきった胸の奥まで響いてきた。



「……ありがとう…」