フォーチュンクッキー

 数人の看護士さんたちが、細い体の女の人を取り押さえている。

ふわふわの髪を振り乱し泣き叫ぶ姿は、とても痛々しい。


 そして、その声はあたしの胸をズキズキと締め付ける。


「お父さんっ!おかあ―…、凛子さんが……っ」

 見上げた隣に、すでにお父さんの姿はなかった。


「凛子さん!僕です、明宏です!」

 お父さんはそういって、まだリハビリ中の腕で台風みたいな現場を鎮めた。

あたしの足はすくんでしまって、北風が冷たいのにさすることすら出来ずにいた。


「あき……ひろ、さん…?」

「そうです、僕です。…不安にさせてしまって、すみません」

 困ったように笑うお父さんの背中。

ようやく、凛子さんはしなだれかかって安心したようだった。


「どうして……来てくれなかったの…っ?」


 まだ涙を流す凛子さん。

あたしも勇気を出して、一歩ずつ近づいていった。


 まるで、ドラマのワンシーンを見ているかのようだったけど、これがあたしの現実。

ゆっくりと、お父さんの背中を目指していた。


「怪我をしてしまって、僕も入院してしまっていたんです。……凛子さんと、おそろいなんです」


 柔らかく笑うお父さんに、凛子さんは大きな瞳いっぱいに涙をためて抱きつく。

恋人さながら、あたしは恥ずかしくもなんだか誇らしい気持ちだった。


「嫌われてしまったのかと思った……」