怜は体も大きければ、声も大きい。

 高校に入学して知り合って、3年間同じクラスということもあり、この性格もあってかオレは拒めないでいた。


 そして、ごめんごめん、と謝るその顔は人懐っこくて、なかなか憎みきれないヤツだから困ったもんだ。


「もう、怜ってば」

 一連の様子を見ていたサトは、可笑しそうにオレの隣の席に座る。



 試験っていうのは教師の都合上、出席番号順に座らせられる。


“長谷川”の怜はいつもオレの前だし、“中谷”のサトは大体近くだった。


「なんで中学なんだよ?お前でも勉強することあるだなぁ…」


 マジマジと感心するかのような怜の言葉。

オレにはからかっているようにしか聞こえない。


「うっせ、試験前に試験勉強するほどアホじゃないんだよ」


 かばんから自分の教科書を取り出したものの、オレの机を覗き込んでくる怜にたっぷり嫌味をこめた。


 ほっといてくれというオレの気持ちを汲んでほしい。

でもそんなことは、この二人には通じない。


 ここぞとばかりに食いついてくる。


「うわー、学年トップは言うこと違うわね~」

 イーっとかわいい顔を崩してオレを見てくるサト。


 あの不似合いな腕時計をちらつかせるかのように頬杖をついてた。


ここまできたら、一種の被害妄想だ。