あたしには分からなかったけど、自然とゆっくりと腰に手を回そうとした。

でも、その瞬間ぐいっと引き剥がされる。


 見上げた太一さんのほっぺたはりんごみたく真っ赤だ。


「……そんだけ」

 ふいっと視線をそらした太一さんに、胸が苦しくなる。

心臓が痛いほどドキドキして、呼吸も忘れてしまいそう。



「ほら、勉強がんばってこい」


 一瞬の油断だった。

くるりと身体を回され、あたしは我が家のほうへ背中をトンと押された。


 名残惜しくも、一歩進んで、あたしはもう一度振り返る。

「太一さんっ」

「……ん?」

「あの、さっきは……っ」


 ごめんなさい、って言いたい。

八つ当たりして……ううん、コドモでごめんなさいって。


でも、あたしより先に太一さんはゆっくり口を開いた。


「サトは、友達だから」


 思いもかけない言葉で、あたしの方が声を出せなかった。


「幼馴染だけど、友達。……怜と、同じくらい大切な…」


 そう。

太一さんは八つ当たりで言ったあの言葉を、きちんと受け止めてくれていた。