朝からパラパラと教科書をめくっては、ペンをくるくる回してた。


 周りではやれこれが出るやら、あれは捨てるだと騒いで、中には開き直っているのか笑い声さえする。


それでもオレは目の前に夢中だった。



「おはよう、太一」


 明るい声が後頭部から降ってきた。


 その声の主はわかっていて、オレには無視できない人物。



「おはよう、サト」

 振り返れば、やはり予想通り。

 そして彼女がいるということはアイツもいるわけで。


「太一がいるってやっぱ珍しいな」

 サトの後ろから、相変わらずでかい図体を揺らしてやってきた。


「まあ、さすがに試験日だしな」

 なるべく目を合わせないように、また視線を落とす。


 そんなオレの前の席に、この壁のようにでかい怜はドカッと座る。


「うわ、なんだよ、中学の教科書じゃんっ!」

 オレの手元を勝手に覗き込むと、教室中響くほどの声をあげる。


クラスメートの痛い視線を浴びているのは、十分わかっていた。


「ちょっ……、怜!」