桜が咲き始めたこの通学路も、残りあと一年。

そう思ったら少し寂しい。



 ピンク色の絨毯は間もなく終わりを告げる帰り道。

いつも通り、三人で歩いてたら不意にそう思ってしまった。


 頬を撫でる春風にふと顔をあげ、きゅっとカバンを握り締める。

多分、二人には気を遣わせちゃうことになるのだろう。


 この一年は、特に。


「そ、そういえば、さ。……杏ちゃんと雛太は、塾いくの?」


 あたしの質問にものすごく二人は驚いていた。

目を丸くさせ、三人とも時が止まったように、ぴたりと足が止まる。


 ごくんとつばを飲み込んだら、意を決したように、杏ちゃんが一歩脚を動かした。


「う…、うん…っ」

 一瞬怯んだあと、杏ちゃんは申し訳なさそうに頷いた。


 その隣の雛太はというと、無言。

……でも、表情を見ればわかった。



 受験生っていったら、やっぱり、そうだよね。


「…───じゃあ、二人があたしの先生だね!」


 あたしは笑って二人を見ると、ようやく雛太は答えた。


「任せとけ」


 他の人にはそっけなく聞こえるかもしれない。

だけど、あたしにはとっても頼りがいのある言葉だった。