机に突っ伏すチビ助の背後に立ち、囲うようにテーブルに両手をつく。

当のチビ助は、口にしたことも無意識なのだろう。

すやすやと、まあキモチよさそうに目をつぶっている。


 誘惑するかのようにくるんと垂れているクセ毛をのけて、オレの影が落ちている頬を手の甲で優しく撫でた。

それでも起きる気配のない様子に、オレは無心だった。



 次第に吐息が近づき、比例するように心臓が高鳴っていく。


 お前がスキなのはオレだけであってほしい。

そんな薄汚れた独占欲丸出しの、最低な男だけれども。




 微かに零れる寝息を塞ぐように、オレは季節外れの桜色の唇に重ねていた。



 出来てしまったその距離を、ただ、縮めたい……。




 触れる程度の優しい感触は、悔しくも後を引く。

起きてしまう前に離さなくてはならない。


けれど、オレの本能は言うことをなかなか聞いてくれなかった。



 静かな店内は、オレの欲望を満たしながらも罪悪感を漂わすことに十分すぎたのだった。






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