お腹の虫も満足してるし、ぬくぬくと身体も温まる。

冬を感じさせるように足元は冷えるけど、それがまた、眠気を襲うようなぬくもりに変えていく。

それに……今日は心臓がずっと働きすぎた日だ。


 手を繋がれて、キュンと胸を打つような笑顔もみせられて……。

おまけに『キス』なんて……っ!!


 さっきのことを思い出してまた顔が赤くなるのが分かる。

ぐりぐりと腕に小出を押し付けていた。


 太一さんと一緒にいたら……ドキドキしすぎて、身体がもたないよ。






――……らい……。


 遠くで声がした。

それはとても聞き覚えのあるもの。


――みらい。


 この声は……太一、さん?

うっすらとした影から、コーヒーの湯気のようにゆらりと浮かび上がったのは少し困ったように笑う姿。


「本当は、連れていきたいよ」


 すっと伏せた瞳は、とても哀しそう。


連れていきたい?

それは留学のこと?

でも、あたしは……いけないよ。


 声を出していないはずなのに、あたしのこの言葉は太一さんに伝わったよう。

ふわりと体が温かくなり、まるでぎゅっと抱きしめられているようだった。