フォーチュンクッキー

「……はい…」



 太一さんの背中を見送った後、お父さんの荷物を洗濯機に放り込みながら、大きくため息をついていた。


 いつも……ううん、こんなことになる前みたいな太一さん。

気まずいのなんて欠片も感じていないよう。


「…なんで?」


 遠くで洗濯機がごうごうん、と音を立てる中、必死に勉強しようと試みるものの。

勉強どころか、太一さんのことばっかり考えていた。


 だって、頭にこびりついて離れない。

握られた手の感触、あどけない笑顔。


 ああ、やっぱりあたしは太一さんが好きなんだ。


再認識させるには十分すぎた。


 …もうそんな権利はないのかもしれないけど。


 チラリと横目でみた台所。

いつもアレを作ると入れている花柄の紙袋が、ちょこんと隠れるように置いてある。


 甘い囁きと律しようとする葛藤で、おそらくへんな味がするんだろう。

それでも…気になるくらいなら、と思って作っておいた。


 そんな不安なときによぎるのは、あのサトさんの真剣な眼差し。

「太一、ちょうだい?」


 二人の距離には全然かなわない。