フォーチュンクッキー

 お父さんの病室でも、生きた心地がしなかった。

今はもう外してしまったけれど、さっきの太一さんの言葉や握られたままの手がやけに恥ずかしくて。


 病室にはいる直前にすっと離れた指先。

扉を開くため……なんてヘンな言い訳をしてた。


 当のお父さんは、松葉杖を片手に荷物を片付け始めていた。

リハビリの一環として、といいながら必死に服をたたんだり、つかっていた台なんかを拭いていた。


とうとう、明日からはお父さんとの生活が再開されるのだ。


「……らい…。未来っ?」

「…な、なに!?」

 ぼーっとしてしまっていたから、お父さんの声に必要以上に飛び跳ねてしまった。

そんなあたしを見て、目を丸くしたお父さんは苦笑いをしてた。

「明日、頼むよ?」

「ふえっ?あっ、うん……!」


 ごまかすように大きく頷くと、すぐ後ろで太一さんの忍び笑いが聞こえた。


 おそらく退院手続きのことだっていうのは分かってる。

本当は振り向いて抗議したいところなんだけど、目を合わせたらあたしはそれどころじゃなくなる。


 数刻前までの、手のぬくもりがじんわりと思い出す……。


「あまり無理して再入院することのないようにしてくださいよ?」

「太一くん、不吉なこといわないでくれよ〜」

「あはは、すいません」