フォーチュンクッキー

 別にパーティが楽しみだから、って笑ってたわけじゃないんだけどな。

とは、口に出さないでおいた。


余計なことを言ったら、次こそいた~いデコピンが待ってるに違いないもの。


 それに、どうせ出来の悪い受験生だし、そんな余裕がないことくらい承知してるつもり。


 まだジンジンとする耳の後ろ辺りをさすっていたら、こつんと頭を小突かれた。

頭にのしかかる重みに、もう一度視線を上げた。



「ばーか、真に受けんなよ」


 吐いた白い息を溶かすように、悪戯な太一さんの笑顔。

ぽうっとしてしまいそうなあたしを目覚めさせるように、冷たい風が吹いた。


 どうやら、あたしはまたからかわれたみたいだ。


距離が開いてしまっても、かわらない太一さんに悔しくて。


「お互い様ですよーっだ」

 あたしだって素直に反応してあげたんだ、ということにしてみた。


……でも、精一杯強がってみたあたしの言葉は、届いてるのだろうか。




 ずっと見てきた、太一さんの変わらない横顔。


 どれだけ頑張っても、好きって気持ちを消すのは至難の業のように思えた。

それとも、太一さんは簡単に終われてしまったのかな。


胸が痛いくらいドキドキするけど、あたしはこの想いを忘れるなんて考えられない。



 そんなことをぐるぐると悩みはじめたら、緊張でやけに喉がからからしはじめた。