ペンがキュっと鳴り響くたびに、あたしはドキドキした。


 いつもならその目や大きな手のひらに見入ってしまうけれど、今は採点待ちという状況がそうさせていた。



 しばらくすると、太一さんはうさぎのマグカップも空になって、数枚の紙をトンっと整え始めた。


 お、終わった…。


 初めての先生から教わった勉強に、テスト。

正直、自信なんてなかった。



 恐る恐る隣の太一さんに目を向けた。

 ただ無言ですっと紙束をあたしの目の前において、カウンターの奥に向かった。


 紙束を1枚ずつめくった。


85点、78点…。

最高は92点だった。



 そして最後の一枚には、太一さんの文字。

あたしは嬉しくて、すこしだけ視界がにじんだ。



“上出来!
でも油断しないように!”


あの独特の崩れた字は、あたしに大きな自信をくれた。


「ほら、いくぞ」

 カウンターからいつの間にか出てきた太一さんは、私服に戻って現れた。

あたしもあわてて紙束をかばんに詰め込んで、扉を開いて待っていてくれた太一さんに小走りに追いつく。