フォーチュンクッキー

 街路樹の向こうにお父さんがいる病院の姿をとらえた頃。

なんとなく会話も途切れ途切れで、お互い言葉を選んでるのに……。


「それにしても、退院がクリスマスなんて、神様からのプレゼントなんじゃない?」


 不意のすこしキザっぽい太一さんの台詞。

平然というけど、あたしはキュンと胸がわしづかみにされてた。


 その言葉の意味にも、あたしはドキドキしないわけがなかった。


「……へへっ」

 そんな太一さんの言葉のほうがプレゼントみたいだ。

ほくそ笑んでしまったあたしの耳に、「…ったく」と小さな太一さんの呟きが聞こえた。


と思ったら、くいっと結ってる髪が引っ張られ、案の定よろめいた。



「いたたっ」

 あわてて踏張って、なんとかすこしよろけただけで済んだ。

胸を撫で下ろして、キッと目の前にいるイタズラの犯人を恨めしげに見上げた。


「んもうっ、痛いじゃないですかぁっ」

 口を尖らせて、自分をいたわるように頭をさする。

そんなあたしの文句は、今にもまたナニカしそうな含みのある笑顔に遮られた。


「お前はパーティどころじゃないんだからな?」


「わ、わかってますぅ〜っ」

 太一さんの呆れたような口調に、髪をきゅっと縛りなおしながら反論した。

もしかしたら、お父さんとパーティで盛り上がっちゃうとでも思ったのかもしれない。