フォーチュンクッキー

「へぇ、明日?」

 久しぶりに見た青空の下、隣には見慣れたコートを羽織った太一さん。

「はい、そうなんです」

 普段より断然早い帰り道にあたしたちは肩を並べてる。


「そっか、もうそんなに経つんだな……」

 少し遠い目をした太一さんの横顔は、どこか嬉しそうだ。

心配してくれてたんだ、と再認識せざるを得ない。



 今年最後の登校日を終えて、日課のお見舞いにいく途中だった。

少し気まずい雛太たちとの帰り道からさらうように、太一さんは自転車でかけつけてくれた。


「じゃあ、これからは家に帰っても淋しくないじゃん」

 必死に隠していたつもりだったんだけど、どうやら太一さんはあたしの気持ちはお見通しらしい。

恥ずかしいよりも、そんな些細なことも気づいてくれたという嬉しさのほうが上だった。


「はいっ」

 元気よくあたしは頷いた。


 ぎこちない二人の歩幅。

まだ少し後ろめたさは残るけど、他愛無い話をしながら葉っぱがなくなってしまった並木道を抜けて、お父さんの病院へと向かった。



 今日は節目なのかもしれない。

今年の登校も、こうしてお見舞いに行くのも、最後になる。

いろいろあったけど、とうとう明日はお父さんの退院日で、また、二人でやりくりする毎日が始まるんだ。




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