あたしはこんなに必死にしているのに。

でも太一さんは、怒るどころかふっと顔を緩めた。



「チビ助が心配することじゃないよ」


 最近気づいた……太一さんが優しい。

こういうと語弊があるかもしれないけど、普段は意地悪ですぐからかったりしてくるし、すごくコドモっぽい。


でも、近頃の太一さんは本当に遠くに感じるほど、優しい。


 あたしの気持ちも全部、勝手に持っていっちゃうみたいで…怖いんだ。



 こんな状態で誕生日を祝うどころじゃないけど、せめてのこりわずかな時間を大切にしたい。


 あとすこし。


あたしの想いは、消えるどころかひたひたと募る一方。

小さな太一さんの優しさが、嬉しくてくるしい。


もう少し、縮めたいけど埋まらない距離がもどかしかった。





「押し倒せ!」

 ふと思い出すのは、すこし前に小さく呟いたあたしの弱音に反応した杏ちゃん。


 突然ナニをいうの!と、一気に赤くなった顔で怒ったっけ。

火照るあたしを、まるで楽しむかのように杏ちゃんは笑ってた。



「それぐらいスキって言ってもいいじゃん?」

 そんな言葉に、あたしはどうしてか図星を刺された気分だった。