「じゃあ、明日までにもう一回そこからここまでやっとけよ?」

 あたしの教科書と、昔、太一さんが使っていた参考書の頁に丸印がつけられる。


 トントン、と荷物をまとめて、いつもの制服の上にいつものコートを羽織り、あたしはその背中を見送る。


 相変わらず狭い我が家だけれども、太一さんが勉強を見てくれる時間だけは距離を縮めてくれる。


「おやすみ」

 太一さんがちょうど扉に手をかけたときだった。


「太一さん」

 あたしは一つ確認したいことがあった。

……なんていいつつ、すこし寂しかったのもあると思う。



「誕生日がクリスマスイブって本当ですか?」



 心底驚いたのか、きょとんとあたしを見つめてきた。



「……なんで知ってんの?」


 そこではっと我に返る。


だって、直接太一さんから聞いたわけではないもの。

ある種ストーカーだなんて思われたくなくて、あたしは必死に小さな脳みそを働かせる。


「……う、噂で……っ」


 とっさに出てしまった言葉に、我ながら恥ずかしい。

そんな理由、あるわけないもん。



 ああ、またデコピンされるんだぁ〜っ!


なんて歯を食い縛りながら恥ずかしさを堪えてた。