しかし、オレの思いなんてちっともわかっていない雛太くんは更につっかかってくる。


「だからってあんな冷たい態度していいのかよ!」

「うるさいな!オレは決めたんだよ……っ!」


 オレの迷いをついたような彼の言葉に、大人気なく声を荒げてしまった。



 本当は、もっと他に方法があったんじゃないか。

 ……いや。 知っているけど、傲慢な自分を見せたくないだけ…。


 理由はわかっていても、オレにはやっぱりそれを踏み越えるだけの自信がない。



 そんなジレンマで我を忘れていたから、すぐそこに誰かが来ていたなんて気づかなかった。


「誰が、何を?」


 その大きな身体はオレでさえも頼もしく感じてしまう親友。

目の前にいる雛太くんも、突然かかった声に驚いていた。


「怜……」

 思わず呟くと、きょとんと目を大きく見開いた怜がオレと雛太くんを交互に見比べる。

そして、ニカッと太陽みたく笑う。


「うっわ、修羅場に来ちゃったってカンジ?」

 おどけてみせる怜は、裏腹にこの重々しい雰囲気を感じ取ったらしい。

はあ、と一つため息をついてオレは背を向け、手元のグラスを拭きはじめ、いつもどおりに振舞おうとしていた。


 そんなことを知っているのかいないのか、店内を見渡した怜はまっすぐカウンターにつく。



「あれ?サトがきたはずなんだけど…来てねぇ?」

 そんな怜の言葉にいち早く反応したのは、オレじゃなかった。