チビ助が、それを選んだとしても受け入れる。

そう決めたんだ。


 ぎゅっと拳を握り締めて、色が変わらないうちにもう一度緩めてみる。

そこにはやっぱり、涙をためたチビ助が浮かんでしまった。






 ……──あのあと。


 思いもよらないチビ助の登場に、オレは動揺していた。

だけど、その言葉の意味を覚悟してなかったわけじゃない。


「今まで、ありがとうございました……っ」


 たっぷりの涙を浮かべた大きな瞳。

オレはよほど口先だけのオトコなのだと、痛感せずにはいられないでいた。



「太一のバカ!」

 チビ助は姿を消し、それを見ていたサトも睨んだあとに走り去っていく。

そんなサトの罵倒した声で、ようやく自分の足が勝手に動き出そうとしていたコトに気づいた。


 本当に、オレはバカだ。


「なんで未来を追い掛けないんだよ!」

 雛太くんの声に現実を思い出す。


 本当は、すぐにでも行きたい。

それでも行かなかったのは、チビ助に選ばせたいという決意があったから。


「……オレはアメリカに行く。それを変えるわけにはいかない」


 半分、言い聞かせていたのかもしれない。

そうでもしないと、決心が鈍ってしまいそうなほどチビ助の言葉は重く深く響いてた。