「サトさん……」


 ゆっくり振り向くと、腰に手を当ててむーっと頬を膨らます姿。


「んもう、早く行きなさいよ!」


 そのサトさんの言葉が、怖いというより嬉しくて。

あたしは大きく頷いて、来た道を戻るように走った。



 教えてくれた太一さんに、もう一度あたしの気持ちを伝えなきゃ。


ただそれだけで、無心に足を動かした。








「ホント、手間のかかる子たちね」


 寒空の下、風に消えるようなサトさんの言葉があたしに届くわけがない。





「あとは怜次第、かな……?」




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