フォーチュンクッキー

「知らずにいなくなっちゃうはずだったあたしには、羨ましいけどね」

 じっと影を見つめて笑ってるふりをする姿に、あたしは声が出なかった。


 なにもできないあたしのことを羨ましいという。

あたしには、そんな強いサトさんのほうこそ羨ましい。



 そしてサトさんは、しんみりとした雰囲気を壊すように、はーあ、と伸びをするように呟いた。


「今頃、太一はどうしてるのかしらね。このままじゃ誕生日もひとりかしら?」

 クスリと笑顔を交えていたけど、あたしは魔法がかかったようにピタリと涙が止まった。


「……たん、じょうび?」

 聞き返したあたしに、サトさんはあんぐりと口を開けていた。


「もしかして、知らないの?」

 驚きを隠せないといわんばかりに、まん丸の目でマジマジと見られていた。

「だって…」

「んもうっ、さっきからそればかり! 言い訳はもういいわ!」


 再び俯いたあたしに、サトさんはいい加減語尾を荒げた。

これで何度目の、見慣れた靴先をみたことか。



「あなたは太一の事を考えてるふりして逃げるのね」

「逃げてなんか……っ!」


 サトさんの言葉に、再びあたしは突っかかる。

だって、あたしは精一杯考えたんだもの。


あたしの抵抗すら一蹴して、サトさんは本当に怒っていた。


「あなたはわかってない! 太一が、自分の誕生日を忘れるくらい必死に悩んでいたことをっ」


 そのとき気づいた。

サトさんにうっすら涙が浮かんでいたこと。