フォーチュンクッキー

 少し。

……ううん、たくさんの後悔。


 太一さんともう会えない。

『疲れた』なんていわれて、傷つかない人がいるわけない。


 あたしが一番いいたくない言葉だったのに、気が付いたら口にしていた。

数年前なのに、まるでずっと昔に聞いたみたいなお母さんの言葉が鳴り響く。



「もう……『お母さん』疲れちゃった……」

 涙からがらの声は、ビリッと胸を引き裂くようだったのを今でも鮮明に覚えている。



 今日の学校では、何度か雛太が声をかけてきたけど、顔なんてあわせられるわけがなかった。

そんなあたしたちのようすを見ていた杏ちゃんも、気まずそうに顔をしかめていたっけ。


 ごめんね、と思いながらも、あたしはそうするしかできなかった。


 ため息を吐きながら、久しぶりの一人の帰り道。

 昨日の雛太の想いと自分への呆れに、吐く白い息すら、自分の失言を責め立てるようにしか見えなかった。


 商店街に差し掛かる前、ずっとつまさきを見ていたあたしを待っていたかのように、影が動いた。


「ちぃーっす」

 ぴたりと足を止めて顔をあげると、立ちはだかったのはもう見覚えのある姿。


「サトさん……」

 また、昨日の当事者の一人。

あたしの戸惑いなんて見透かしているのかもしれない。

くるくるとチェックのマフラーを巻いたサトさんは、ポケットに手を入れたまま顎だけで少し向こうを指した。



 そのつぶらな瞳はとても強くて。


「ちょっと顔貸してよね」


 有無を言わせないような口調に、あたしは黙って従ってしまった。