フォーチュンクッキー

 黙ってじっと扉の前にいたから、周りからはとても怪しい光景だったと思う。

でも頭でわかっていても、足は根が張っているかのように動かせなかった。


 震える手を落ち着かせようと、もう片の手をぎゅっと包み込んだときだった。


「あれ?なにやってるの?」


 背後から声がきこえ、大袈裟なくらい肩が飛び跳ねてしまった。

ゆっくり顔をあげると、そこには相変わらず綺麗な顔立ちのサトさんがいた。

「あ……」

 少し苦手なのもあって身構えてしまう。

でも、そんなあたしにお構いなく、近づいてきたサトさんは身を屈めて覗き込んできた。


「泣いてる?」


 言われたとおり、そっと目の下に触れてみると微かに湿っていた。

いそいで拭って目をそらした。


「泣いて、ません……」


 いい訳みたいなあたしの言葉を無視するように、あたしを通り越してサトさんは扉に手をかける。


「はいはい、よくわかんないけど店にはいろ?」

 気さくに言ってくれたけど、あたしは黙って顔を横に振る。

だって、今、足を踏み入れたら……。


「もしかして、太一とケンカでも……」


 意地悪顔でサトさんがいいかけた瞬間だった。




「はぁっ!?未来おいて、留学!?」


 店内から響く雛太の声。

はっきりとあたしにも……目の前のサトさんにも届いてる。