フォーチュンクッキー

 雛太がこの喫茶店にくるなんてかなりめずらしい。

やっぱり漢字テストがよくなくて、太一さんに相談しにきたのかな。


 次の言葉を聞くまで、そんなふうにしか考えてなかった。



「どうせ、あんたが未来を泣かせてるんだろ!」


「………」


 扉についている小さなガラス越しに、俯いた太一さんと目を反らさない雛太がいた。

ピタリと時が止まったかのように動かなくなった二人。


 反対にあたしの鼓動は、怯えるようにドクドクと音を立て始める。



 雛太は、どうしていつも痛いことばかりいうんだろう?


ドアノブに触れている指が、なぜか震え出した。


「未来が笑うから……オレは、諦めたんだっ。
……なのに、なんでアンタが泣かせてるんだよ!」


 今にも手をあげてしまいそうな雛太の勢い。

それでも太一さんはむきになる様子もなく、くるりと背を向けてしまった。


 あたしはわかっていなかった。

雛太の深い想いを……。



「…雛太くんには、関係ないでしょ」


 静かなその声すらも、あたしの耳に貪欲なまでに届く。

そしてピリリと伝わる雛太のむき出しの敵意。


 違うよ、雛太。

太一さんは悪くないの。