フォーチュンクッキー

 面と向かうとやっぱり照れくさいから、手に持っていたコーヒーの波をみていた。



「……きちんと、考えて決めたから」



 母さんがどんな顔して話を聞いてくれてたかは分からない。

でも遮ることなく、静かに待っててくれた。


「母さんはアイツのこと気に入らないかもしれない。
…でも、今、オレがこうして話していられるのはアイツが……未来が、いたからだから…」


 チクタクと秒針が進むたびに、口にした言葉をリアルにさせる。

少し冷えてきた部屋の中が、オレの声をより響かせている気がした。


「アイツに、教えられたんだ。
今まで逃げてきたことや、オレがどれだけ恵まれていたかってこと。
……正直、情けないなって思った」


 相槌すら打たない母さんを、勇気を振り絞って見上げてみた。

そこには、見たこともないくらい優しい笑顔があった。


 驚きのあまり一瞬つっかえてしまったけど、オレは続けた。


「ダサイかもしれないけど」


 母さんが文句一つ言わずオレの話を聞いてくれている。

じわじわと羞恥心が勝っていくのが解り、鼻をクシュっとかいてみた。


「…だから、彼女とつりあうような自分でありたい。自信をもって、隣にいたいんだ」


 結局、最後は恥ずかしくて視線を落としてしまった。


 冷静になれば、とんでもないことをいってしまったな、と自己嫌悪が何倍にもなってのしかかる。

でも、後悔だけはしてなかった。



 それは、紛れもない一番素直なオレの気持ち。