フォーチュンクッキー

 大きな深呼吸をして、靴を脱ぐ。


 いつの間にか越してしまった母さんの背丈。

威圧的な雰囲気さえ抜かせばところどころ、年齢を感じさせる。


 チビ助と対等となるために。
そして、母さんから逃げずに自分と向き合うために。


 目の前でじぃっと見下ろしていたら、母さんのほうが挙動不審になった。


「…な、なに…?」

 オレの態度が今までと違うことに驚いていたみたいだ。

嫌だ、と散々跳ねのけていたけれど、そうはいっていられない時だってある。


「母さん」

 百面相のチビ助が脳裏をよぎった。

これが決まってしまったら、当分はチビ助にあえなくなるのだから。

それでも、立ち止まらないと決めた。



 ……たとえ。

チビ助がこの先、変わってしまったとしても。


 ぎゅっと拳を握り、コクンと喉を鳴らす。



「オレ、母さんについてく」


 じっと見つめていた母さんは、驚きのあまりかポカンと口が開いたまま。



「太一…。本気、なの?」

 うかがうように覗き込んできた母さんに、オレは素直に頷いた。

何かを探るような瞳に、ヤマしいことがないはずなのに心臓が波打つ。