不甲斐ないオレの勢いは、アレから撃沈した。

りんごみたく真っ赤で、めちゃくちゃ緊張で硬直してるチビ助の顔は今でも忘れられない。



 あの文化祭の日、チビ助をみてたらいつの間にかキスしようとしていた自分がいた。


 チビ助が中学を卒業するまで。

好きだといいながら、手を出すのに臆病になっている。


 だからあの時、理性なんかふっ飛ばしてあの小さな唇に重ねておけばよかった。

そんな風に後悔ばかりしていた。


「ごめんって」

 笑いながら謝る怜たちとは、当分口を利いてやらなかった。


 人をオモチャにしやがって……っ!!


 当たり所のない憤りを八つ当たりしていたのは、わかっていた。

それでも毎日チビ助に会うたびに、どうにかしたいというキモチと、まだダメだというキモチが葛藤してる。


「太一さんっ」


 名前を呼ばれるたびに、クセ毛が揺れて少しはにかんだチビ助を抱きしめたくなる。

相当、重症のようだ。



 この頃は、すでにもう冬の厳しさが角を出し始めた11月の終わり。

文化祭なんかとっくに忘れてるチビ助は、毎日のようにおじさんが入院している病院に行っている。

オレは自転車を飛ばして毎日迎えに行き、チビ助の家で勉強を見ている。