「ちょっ…押すなって!」



 どこからか声が聞こえたと同時に、ドサッと校舎の影から何かが倒れこんできた。


大きな音にはっと我に返って、反射的に突き飛ばすように太一さんに離れてしまった。


 それこそ顔もあげられず、火照った顔を見られたくなくて俯く。

あたしはただ、目の前の太一さんのズボンの裾をひたすら見つめて、その場をやり過ごそうとしてた。


 そんな太一さんの足がくるりと他の方向へ。


「お前らなあぁぁっ!!」


 怒りのような、照れのような太一さんの声が、ぴしりと雷みたく頭上で走る。


 ようやくチラリと視線だけ上げると、顔を真っ赤にした太一さんが倒れこんでいた人たちに向かって勇み足で向かっていた。



「いや、ちょっと待てよ、太一!」

 引きつり笑いを浮かべる怜さん。


「怜から誘ってきたのよ?」

 やっぱり可愛いサトさん。


「え~…とぉ、長谷川先輩は悪くないですよ~?」

 不満そうに口を尖らせたのは、バスケ部マネージャーの松永さん。


「ご、ゴメンね、未来っ!」

 ちょっと頬が赤い杏ちゃんに…


「だからいったじゃん…」

 呆れ顔の雛太。