フォーチュンクッキー

「ふ…二人とはぐれちゃって、なんか…心細くって」


 頬を軽く掻いてると背後から笑い声が響いた。

 なんだか嫌な予感がしたけれど、ゆっくり振り向けば案の定、お腹を抱えている太一さんだ。


 杏ちゃんの制服を握り締めていた手のひらに、さらに力が入ってしまう。


「そ、そんなに笑わなくたっていいじゃないですかっ」

 下唇をきゅっと噛んでいると、太一さんはちらりと片目を開けて、再び笑い出す。


 急に親友たちとはぐれて、よく知らない場所に独りぼっちになって。

さらに会いに来た太一さんは、なんだか楽しそうで…っ!


 イイコトなんて何一つ見当たらなかった。


「まあまあ、未来…」

 なだめようと困り顔の杏ちゃんが背中をさすってくれる。

だけどその光景に、怜さんまで笑い出した。


 結局、あたしがはぐれてしまったことは周囲に知られてしまって、恥ずかしすぎる。


「太一、笑いすぎ」

 見守っていたサトさんが、隣の太一さんの頭を小突いていた。

 なぜだか無性に悔しい。


「未来、顔怖いけど?」

 肩をすくめている雛太の言葉を思わず聞き流してしまった。

みんなしてあたしを子供扱いして、バカにしてっ!


 ゆっくり歩み寄ってくる太一さんから逃れるように、杏ちゃんの腕をぐいっとつかむ。


「い、行こう!あっちのほうからいい匂いするよ!」

「ちょ…!未来っ」

 そんなあたしを見てか、さらに太一さんは笑い出す始末。