フォーチュンクッキー

 うんざりと嘆くような声が響く。


「あっちぃよ、コレ…」

 あたしの体は正直で、ぴくんと反応してしまった。


「お疲れさま~、平山くん」

 さっきの女の人たちの声がやけに耳に障る。

どうしようもなくて振り向くこともできずにこぶしを握っていた。


「あ、さんきゅ」

 聞いたことがないような、その雰囲気に声すらもでない。

ぷしゅっとはじけるような音が響くと、雑踏を一瞬に消すかのように、あたしの喉が鳴る。


 …後ろに太一さんがいる。

多分、気づかれた。


「あっれー、太一先生ってばお早いお帰りで~」

 あたしたちの緊張を吹き飛ばすかのように、わざとらしい怜さんの言葉。


「ったく、そういうことかよ…」

 吐き捨てるような太一さんの言葉に、なんだか胸が痛い。


 やっぱくるべきじゃなかったんだろうか?


「未来ちゃん、チョコバナナたべる?」

「え、あの…」

 相変わらず太一さんとは目もあわせていないけど、覗き込んでくる怜さんに戸惑うだけだった。


「さぁさぁ、こっちへどうぞ」

 腰辺りをぐいっと押されるように、歩かされる。


「怜っ」