見抜かれた気がして、ドキリとした。


 杏ちゃんや雛太は塾にいって、習っていない問題もスラスラ解いていた。

学校の先生も、それが当たり前みたいに言うことに、あたしはいつも劣等感を感じてた。



 あたしには教えてくれる“先生”がいないから。


 だから、ずっと親友の二人にもこんな気持ちは言っていない。

ううん、伝えられない。


 そんなあたしのこともわかってるから、二人はそれ以上言わない。


結局、あたしは何もできないコドモなんだって気づかされるばっかり。


 何かをしたい、だなんてお父さんに今まで口にしたことがなくて。

だからなのか、お父さんはびっくりしてあたしを見てた。



 何故か目が熱くなってきたけど、きっとこの外の陽気のせい。

あたしの心を汲んでくれたように感じて、嬉しくて……。



「……はい…、高校に…いきたいです」


 太一さんの質問に、あたしは素直に頷いた。

すると、すこし骨ばった彼の大きな手の平で優しく頭を撫でられる。


お父さんは何か考えた後、深々と「よろしくお願いします」と一礼する。


あたしも慌てて後に続く。





 そんなあたしの“太一先生”は、不意に始まった。