フォーチュンクッキー

 仕方なく再び入り口に戻り、パンフレットをもらう。

その中にはきっと、先ほど杏ちゃんたちが連れて行かれたホラーハウスがあるはずだから。

 一度来たことのあるこの校舎。

だけどここまで人がいると、今どこにいるかさえ分からなくなってくる。


 うろ覚えの道をたどり、なんとか玄関口にたどり着いてみたものの、あたしは冷や汗が止まらなかった。

「閉鎖、中…?」


 そう簡単にはいかなかった。


 あたしが通ったことのある昇降口は、現在閉鎖中だった。

張り紙には、安全確保につき反対側にある来賓用玄関より入館してください、と堅苦しく書いてある。


 押し寄せる不安に、なんだか視界がにじんだ。


 杏ちゃん、雛太…。折角一緒にきたのに、一人で回らなくちゃ行けないなんて。

しょげるキモチを必死に奮い立たせる。


 …そうだ!こんなところで、泣くもんか!

肩で大きく息を吐いて、もう一度気を取り直し、くるりと振り向いた瞬間だった。


 ぼすん、と固いものに思い切りぶつかってしまった。


「あいたっ!」

 衝撃にやられた鼻をさすってると、聞き覚えのある声が降ってくる。



「…あれ?」


 ゆっくり顔をあげると、声の主が日差しを遮るように立っていた。

ボンヤリとしたシルエットからはっきりしてくると、あたしは思わず顔が緩んでしまう。