そっか…、今は仲がいいんだね。

ケンカがすぐ始りそうな雰囲気が怖かったけど、もう仲直りできてるならよかった。


 ほっと胸をなでおろした、そのときだった。


「…あれ?太一さん、一人暮らしなんですか?」


 今まで聞いたことなかった。

だって、ここへくればあたしを送ってくれるし、太一さんがやってくるのはいつも学校帰りの制服姿。


「え?未来ちゃん、知らなかった?」

 あたしの言葉に、マスターも驚いてるようだった。


 全然、聞いてない…。

なんで教えてくれなかったんだろう。


 …やっぱり、あたしが何もできないコドモだから…?

頼りにならないのかな?


 そう考えたら、どうにもならないやるせなさがじわじわと体を支配した。


 きゅっと拳をにぎると、それを見計らったかのように喫茶店の扉が音を立てて開かれた。


「あれ、チビ助?」

 その声にビクンと肩を震わせてしまった。

 なんてタイミングが悪いんだろう。


「こ、こんにちは…っ」

 あたしは思わず席を立っていた。

「病院いいのか?」

「あ、…はい…」

 なんとなく気まずくて目をあわせられなかった。

やっぱり本人のことは直接聞けばよかった、なんて後悔はもう遅かった。


「家のこともあるんで、帰ります」