確か、マスターは中学校の先生やってたっていってた。

二人の言い方からすると、太一さんの先生ってことだと思う。


「…どうしたの、いきなり」

 太一さんみたく、あたしの正面で頬杖をついて顔を覗いてきた。

なぜか、マスターの笑顔って安心しちゃうんだ。


「あの…昨日、太一さんのお母さんが来て…」


 なんとなく口ごもってしまった。

なんて説明すればいいかもわからなかったのも本当。


 あたしの言葉にマスターは苦笑いをこぼし、何かを悟ったように、話し始めてくれた。


「太一ね。ちょうど未来ちゃんくらいの時かな…、親が離婚してるんだよ」


 あたしはビックリして落としかけた視線を戻した。


「深いところまでは僕は言えないけど…。太一も反抗期だったから、そりゃもう、大変だったよ」

 マスターはくすくすと思い出し笑いをしていた。


 あたしからしてみればそんな荒れてたなんて想像できなかった。

太一さんはしっかりしてるし、…たまに意地悪なときもあるけど、随分大人びてみえるもの。


「他にもいろいろ理由はあったみたいだけど、ね。学校にいかないなら僕の店においでっていったのが始まりなんだよ」

 ぽんぽん、と軽く頭を撫でて、マスターは笑いかけてくれた。


「太一のお母さん、ちょっとキツイでしょう?」

 少し声の音量を下げたマスターに、噴出してしまった。


「まあ、今はなんとかうまくやってるみたいだし。太一も一人暮らしは大分慣れただろう」