彼女は先ほどと同様、中学三年生であることをマスターに告げている。


 そこの一角だけ、温かい空気が流れ始めた気がして、居場所のないオレはなんとか無理やり納得させた。


「受験生なんで単語帳作ってるんです~」

「そりゃ偉いねぇ」

「えへへ」

 マスターに単語帳を見せる姿はやはり、来年は高校生だなんて結びつくわけがなくて。

けれど、和やかな雰囲気に、なんだかショックを受けているオレが馬鹿げてるように思えてならなくなったのも事実。


 彼女たちに背を向けて、また新たなマグカップを意味なく拭き始めたころ。

意地悪そうなマスターの視線に気づいて、ジト目で返事をした。



「……太一さぁ」


 マスターの視線が痛い。

ものすごく嫌な予感に駆り立てられる。




「お前、勉強みてやれよ」


「………はぁっ!?」




 唐突のマスターの提案。






 今日は、オレの厄日だろうか?



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