言い馴れない、未来ちゃん、だなんて。

 心臓がこそばゆくて叫びだしそうだ。


 きっと隣のチビ助はさぞかし喜んでいることだろう。

喫茶店に来たときにだって、いつも通り「チビ助」って呼んでいる。

けれど、改めて会いに来たんだから、きちんと名前で呼ぶほうがきっといいにきまってる。


「…そう、なっちゃうかな」

 おじさんもドキドキしてるんだろう。

男二人がチビ助のために手探りの会話で、後から考えればとても可笑しい光景に思えた。



「彼女の受験勉強の件なんですけど」


 ようやく本題に触れると、おじさんは目を見開いて、はーっと思いっきり息を吐いた。


「なんだ、そうか…そうだよな…」

 遠くを見て自分を落ち着かせているようだ。


「これから病院の行き来も含めて、時間が限られてくると思うんです。
…だから……」


 オレのここ一番の心臓の高鳴り。




 昨日からずっと考えてた。

手をつないで帰って、家につくと寂しそうに笑うチビ助。


 もうわかってる。

泣き出しそうなのを必死にこらえてるのは。



 そういう思いを、できるだけさせたくなかった。


 オレにできることならば。