その手のひらを見ていて思い出してしまった。
昨日はこの指が絡み合っていたんだ…。
思い出すだけで顔から火柱が立ちそうになり、かきけすように頭をふった。
そんなあたしをよそに、お父さんは気まずそうにちらちらみてくる。
「未来…、お、お父さんの勘違いかもしれないんだけど…」
「なぁに?」
そんなに言いづらいことなのかな?
「た、太一くんとだなぁ…その…つ、つ…つきあったりとか…」
ぎくっと心臓が跳びはねる。
きちんと言った方がいいのかな?でもなんていえば…。
あたしのちいさな脳みそはショート寸前。
だって、こんなこと初めなんだもんっ!
「そ、そうだよなぁ、未来もお年頃だもんなぁ…」
あたしの返答がないことを察して、語尾が小さく消えていくのが分かる。
フォローの言葉もみつからない。
「お、お、お茶かってくるねっ!」
あたしは逃げるように病室を去ることしかできなかった。
お父さんにばれちゃった…。
顔がものすごく熱くて、手でぱたぱた仰いだけど間に合うわけもない。
おかげで自販機で間違えて砂糖一つ入ってないコーヒーを買ってしまう。
「うぅ…太一さぁん…」


