フォーチュンクッキー

 ぶっと噴出すように、反対側で見ていたサトも一緒に笑い出した。


「はい、決定」

 満面の笑みで身を翻す怜は、辺りに散らばっていた部員を集め始める。


「…あ~っ、もうっ!」


 仕方なく立ち上がり、かばんをチビ助に預ける。

 目をまん丸に広げるチビ助は、あたふたと大事そうにオレのかばんを抱きしめた。


「ちょっと、待ってて」

 コクリと頷いたのを確認して、オレは怜の待つコートに向かった。


 あの試合の日から1ヶ月以上も経過している。


 さすがに体力は落ちていた。

だけどこんな雰囲気で体を動かすのは嫌いじゃない。



「もう、無理っ」

 後輩たちと組んだ3オン3は怜相手ではかなうわけもない。

「はやいよ、太一!」

 おちょくってやる気を出させようと試みるる怜に、容赦なく背中を向けた。


 もう、勝ち負けなんてどうでもよくなっていた頃だった。


「んじゃ、バトンタッチ」


 近くにいた部員の肩にぽんと手をのせると彼は戸惑いながら、怜の待つコートに走っていってくれた。




 隅っこでこっちをじっとみつめるちび助の元へ行くと、近くにサトと松永さんもいて。

なんだか異色の組み合わせのように見えた。


「はい、太一」