フォーチュンクッキー

「この子ってこないだの『妹チャン』？」

　誰かの言葉に、隣にいたチビ助の肩がビクンと震えた。


　それをキッカケに辺りの話題はオレからチビ助に摩り替わる。

チビ助はさらに怖気づいてしまったようだ。


「もういいだろ？オレたちメシ食うんだよ」


　体育館を去ろうとしたオレの肩をがしっと強く掴まれた。

そこには汗をきらりと光らせて笑う怜。


「ちょうどいいな、実は…」


　その言葉に続くように校舎から一人、姿を現した。

大きなバスケットを抱えた、オレもよく知る人物。


「なんだよ、勢ぞろいかよ…」


　手を額に当てて、どっと疲労感に襲われる。


「太一ってば、なんなのよ、その言い方！」


　プンとむくれる愛らしい顔の、サト。

　短いスカートを風に乗せながら体育館に向かってきた。


　何も言わずブンとオレの腹に食らわしてその手を離したから、慌ててそのバスケットを落とさないように抱きかかえた。


　もし落としようものなら部員とサトからキッツ～イ小言を言われるに違いないんだ。



「さあ、食べましょう？」

　サトは何もなかったように体育館に入っていく。

　それにつられるように、松永さん含めた部員たちはゾロゾロと館内に歩き出す。


「…メシ、食べさせてくれるって」

　ため息まじりに隣のチビ助に声をかけると、困ったように笑い返してきた。


「未来ちゃん、おいで」

　怜の優しい声に、ようやく緊張がほぐれてきたようで、チビ助も小さく頷いてオレを通り越し体育館に足をいれてしまった。