戸惑うオレにお構いなく、まるで音符を並べるように軽快に進む。

 この方向からして、体育館。


「ち、チビ助っ」

 ぽかんとして立ちすくむチビ助に言葉が出なくて、オレについてくるように手招きした。



 むせ返るほど気温が上がりすぎた体育館に到着すると、一気に人が集まってきた。

 何個かある扉も開放されてるものの、この汗ばんだ空気は夏の風では追いついていなかった。


「あれ?太一、どうした…」


 怜の言葉はオレの後ろをみるなり、にやりと怪しく笑う。


 ほら、ね。


 肩から力が抜けて、かばんがズルリと落ちてしまった。


「こんにちは、未来ちゃん」

 ちょこんと後ろにたたずむチビ助に、怜は微笑んでいた。

でもチビ助は周りからの多大な視線にたじろいでいるのか、ごもった返事をしていた。


 オレに顔を近づける怜。


「な?言っただろう?」

 してやったり、というような満足げの怜にオレは悔しくて「はいはい」と適当に答えた。



 …―昨日の気まずい雰囲気の中。

怜は喫茶店をでるなり、そっとオレにメールをしてきた。



『仲直りしたければ、デートに誘ってやれよ?
…例えば、学校見学とか?』



 こうなることは怜の思惑通りだったのかもしれない。

そう思うと、なんだか自分が少し情けなかった。