まだ太陽が登り始めたとき。


「そっちは職員駐車場だから」

 何に怒ってるんだか、勇ましく進んだチビ助の髪を引き戻す。


 見上げてきたチビ助は、案の定口が開いてた。

パチンと額にデコピンを食らわすと、悔しそうに額をこする。


 予想通りの反応にオレは可笑しくてたまらなかった。




 連れだって校庭の横を通り抜け、昇降口に到着した。


 オレは上履きに履き替え、来賓用のスリッパをチビ助に履かせる。

スリッパに足を通したチビ助は、きょろきょろ見渡しながら肩にかけたかばんをぎゅっと握りしてめていた。


「とりあえず、校内からいくか」



 まだ昼前ということもあって気温がぐんぐん上がっていく。

廊下は夏休みだから締め切られ、やけに蒸し暑かった。


 教室のある校舎と美術室や実験室のある特別教室の校舎は渡り廊下でつながっている。

おそらくこの時間だと、教室の校舎は追試組の補習中。


 避けるように渡り廊下を選ぼうとした。


「はぁー…」


 ちいさなため息が聞こえてちらりと背後を見ると、チビ助はパタパタと手で顔を仰いでいる。


その頬はピンクを通り越して、真っ赤だった。



「…じゃあ、購買部に案内するよ」