到着したのは、前にも一度来た太一さんたちの通う高校だ。

きょとんとしたあたしに説明するように見下ろす。


「チビ助だけの学校見学、な?」


 意地悪っぽいあの顔だ。


「いっつも直前なんだもんっ」


 またドキンと心臓が跳ねたのが悔しくて、ぷいっとあたしは校内に進んだ。

そんなあたしの体は急ブレーキをかけられるかのように止められる。


「きゃぁ…っ」

 結ってる髪をくいっと引っ張られ、体の重心が後ろに傾いて目を瞑った。


「こっち」


 …でも、少し苦い香りがしてたから分かってた。

ゆっくり瞼を開くと、そこには可笑しそうに笑う太一さん。


「慌てすぎ」







 セミの声も届かないくらい、熱すぎて……。


あたしの世界は、どんどん太一さんで染まりはじめてる。