フォーチュンクッキー

 やっと辿りついた喫茶店に、先に怜さんが扉を開いた。

その後ろであたしは中に入るのを待つ。


「たい…」

 だけど、怜さんの言葉は続けられることはなかった。


「どうしてですか?」


 聞き覚えのある声が店内から響いてくる。

 まだ声変わりしてない、優しくも強い声。



「いわないなら、関係ないでしょう?」


 棘が刺さるようなその言葉に、なんだか急に怖くなって足に根が張ったように動けなくなる。


 本当は暑くて仕方なくて、一刻も早くお店の中に入りたかった。

それでも入り口で固まる怜さんの後ろに隠れるように身を潜めた。



「だからぁ、アレは…っ」


 困ったようにため息交じりの声は、太一さんのものだ。


 中の様子がまったく分らなくて、ひたすらじっと耳を澄ます。