フォーチュンクッキー

 あの時はお母さんとお父さんのことだと思ってたから、なんのことかわからなかった。


 だけど今は…。



 好きな人。
それをきいて浮かぶのはやっぱり。


 そっと瞳を閉じて想う。


ただそこにあたしと彼がいればいいのに。

なんて、らしくないことを考え始めてしまう。





 遠くでセミの鳴き声が活き活きとしてきた。


 あたしは網戸を閉め、台所に立てかけたコップに冷蔵庫で冷やしていた水を移して一気に飲み干す。

お腹まで通り抜ける冷たさはすぐに体温に溶けてしまった。


 太一さんの気持ち。

 雛太の気持ち。

 …あたしの気持ち。


 一気にごくりと飲み込めたらどんなに楽なんだろう。



 飲み終わったコップを軽くゆすいで、また台所に立てかけた。


 テーブルの上の教科書をみて、あたしはペチペチとすこし冷えた手で両頬をたたいた。


「さーってと、勉強しなくっちゃ!」


 宿題と受験勉強。

 はっきりいって、量が半端ない。


 暑さもあって窓辺に置いた扇風機も、熱を帯びた風しか送ってこない。

冷房は体が冷えるし、なによりも電気代のためにあたしはほとんどつけていない。