外も商店街が少しだけオレンジがかって来る頃。

ついにカフェオレが無くなって、あたしはもういることが出来なくなっていた。


 席を立ち、なけなしの小さなお財布を取り出す。


「あ、あの…」

 あたしの声に反応するかのように、ヒゲのおじさんがやってきた。

タイチさんと同じエプロンで、同じ匂いがする。


「お嬢ちゃん、今日はいいよ」

「……でも…っ」


 だって、ここはお店なんだもの。悪い気がしてならない。


 あたしの2つに結ってるクセっ毛がゆれて、俯くと頬にかかった。

そんな様子に気づいてか、ぽんと頭に重さがかかったので見上げた。


「大丈夫、タイチからもらっとくから」

 にっこりとおじさんが笑ってた。

そして、視界の端っこにいるタイチさんはものすごく驚いていた。


 もっと悪いに決まっている。

タイチさんに会いに来たのに、おごってもらっちゃうなんて。


 戸惑うあたしの指が小銭いれから出たり入ったり。


「チビ助」

 呼ばれた声にぱっと顔を上げる。

タイチさんはヒゲのおじさんの隣に来て、すこしニヤニヤした顔だ。


「将来、体で返してくれればいいよ」


 ラジオのおじさんはタイチさんの言葉に、また大笑いしていた。