杏ちゃんの言葉は、ズキンと胸をえぐるようだ。

スキかキライかといえば、スキなんだけど。



「…だって、ずっと…友達だったんだもん」

 唇をきゅっと噛んだ。


 どれが正しいんだろう?

あたしは太一さんが好きで、雛太はあたしが好きで。


 受験勉強で大切なこの時期に集中なんてできないよ。



 止まらないため息をのみこむようにあたしもクッキーに手を伸ばした。

サクっとした舌触りから広がる甘みが、なぜかお母さんを思い出させる。


 こんなとき、お母さんならどうする?



 あたしの出ない答えを遮るように、杏ちゃんがぼやき始める。


「あぁ、そろそろ塾行かなきゃ~」


 本当に勉強が好きじゃなさそうなのに、大体テストは上位にいるのが不思議だった。


 好きこそ物の上手なれっていうのは、本当なのかな?

そんな杏ちゃんは、時計を確認して大きめのショルダーバッグを手に持った。


「クッキー持ってく?」


 あたしの提案に、嬉しそうな笑顔で頷いた。


「うん、ありがと!」